- 口腔ケア講座
- テーマ「口腔ケアの基礎知識と
- うがいができない方の口腔ケア」
- 日時:6月13日(月)
- 場所:特別養護老人ホーム
こころの丘 高山
入れ歯を磨くときには、入れ歯専用ブラシを使います。植毛部分は通常の歯ブラシと同じナイロン製の毛でできていますが、歯ブラシよりも固いのが特徴です。また、柄の部分も太めに作られているものが多く、力を入れやすいようになっています。
入れ歯ブラシの多くは、植毛部分が2カ所に分かれており、毛の固さや形が違うように作られています。毛の固さがふつうで大きい部分は、義歯床や人工歯全体を磨くときに使い、毛が固く小さい部分は、クラスプやボコボコした端の部分など、細かく複雑な部分などを磨くときに使います。
入れ歯を磨くときにやってしまいがちなのが、普通の歯磨き粉を使ってしまうことです。歯磨き粉は人間の歯を美しく磨くためのものなので、研磨剤や入れ歯にはよくない成分が入っていることもあります。特に研磨剤は、入れ歯に細かな傷を入れてしまい、そこへ汚れが入り込み細菌が繁殖し口腔内を不衛生にしてしまう恐れもあります。歯磨き粉を使いたい場合は、入れ歯専用のものを使うようにしましょう。
入れ歯の汚れは、水で流しただけでは落ちません。入れ歯専用ブラシでしっかり磨くことが大切ですが、それでも見落としてしまうことがあります。汚れやすい部分を把握することで、その部分へ注意を向けることができますので、ぜひ参考にしてみてください。
- ●総入れ歯の場合
- 人工歯が自然歯のように並んでいる総入れ歯は、通常の歯磨きで気を付ける部分とほぼ同じで、人工歯と人工歯の間や義歯床との境目に汚れが溜まりやすくなります。また、粘膜部分にあた義歯床のくぼみにも汚れが溜まりやすくなります。
- ●部分入れ歯の場合
- 部分入れ歯の特徴であるクラスプ部分が、特に汚れやすくなります。入れ歯専用ブラシの植毛部分をうまく使い分けて、細かなところまで丁寧に磨くように心がけましょう。
総入れ歯・部分入れ歯とも、入れ歯の端の部分は磨き忘れが多く、ブラシが端まであたっていないのに磨いたつもりになってしまうことがあり注意が必要です。しっかり磨けた目安としては、指でさわってもヌルヌルしない状態です。よく触れ、よく見ながらお手入れすると良いでしょう。
また、入れ歯を磨くタイミングとして理想なのは、毎食後です。ちゃんと口からはずしてしっかりお手入れすることをおすすめします。
入れ歯は正しく取り扱わないと、変形したり、不衛生になるなど口腔内に悪影響を及ぼします。磨き方にも正しい方法や、気をつけなければいけない点などがあり誤った磨き方をすると、早々に入れ歯がダメになってしまうことも起こります。
入れ歯の汚れで特徴的なのは、ヌルヌルとした「デンチャープラーク」と呼ばれるものです。デンチャープラークは、体へ悪影響を与える生きた細菌のかたまりで、粘着性も高く水で流しただけでは落ちません。必ず入れ歯専用ブラシを使いましょう。
また、入れ歯のお手入れは時間はかかりますが、難しいものではありません。できる限り自分の入れ歯は自分でお手入れするようにしてください。介助が必要なときは、足りない部分を補うくらいにしましょう。自分でお手入れすると、汚れの付き方などから自分の噛み方や食べ方が分かったりし入れ歯に違和感がある場合は、その原因が早期に発見できることもあります。手が不自由な方でも使いやすい入れ歯ブラシなどもあるのでおすすめです。
入れ歯の磨き方
●磨く時に注意すること
- 1.必ず水を張った洗面器の上で磨く
- 流水にさらして磨く際に、手が滑り入れ歯を落としてしまうということも多くあります。入れ歯は衝撃に弱く、落としただけで、ひびが入ったり欠けてしまう恐れがあります。必ず水を張った洗面器を下に置き、万が一落とした時も割れないように準備しておくことが大切です。
- 2.歯磨き用の歯磨き粉は絶対使わない
- 主に歯用の歯磨き粉には研磨剤が含まれています。この研磨剤が入れ歯に細かな傷をつけてしまうのです。この傷に細菌が入り込むと、そこで繁殖し、口腔内ひいては体全体へ悪影響を及ぼす可能性があります。歯磨き粉を使いたい時は、入れ歯用のものを使うようにしましょう。
- 3.義歯床をしっかり持つ
- クラスプがついたものの場合、クラスプを持つと変形してしまう恐れがあります。部分入れ歯・総入れ歯ともに義歯床をしっかりと持ち、落とさないように気をつけながら磨くようにしましょう。
- 4.最後はしっかりヌルヌル確認を
- 磨き終わったあとは、磨き残しが無いかチェックしましょう。指でこすってヌルヌルが付いているようだと不十分な証拠です。不十分なままの仕様は、口腔内の細菌の繁殖につながりますので、十分注意しましょう。
●磨き方の手順
入れ歯についた食べかすやヌルヌルなどの汚れを、流水下で洗い流します。 | おおまかな汚れを落としたら、入れ歯専用ブラシで細かいところまで磨きます。ヌルヌルがなくなるまでが目安です。 | 入れ歯を保管する容器に水を張ります。そこへ義歯洗浄剤をいれ、入れ歯を浸し洗浄されるまで待ちます。 | 浸しておいた入れ歯を取り、流水下でもう一度磨きます。口腔内のトラブルを起こさないよう、薬剤と浮き上がったヌルヌルは完全に落としきりましょう。 |
義歯洗浄剤は、入れ歯の見えない汚れや内側に入り込んだ細菌を除去する、入れ歯のお手入れの補助的なものです。よく義歯洗浄剤だけで入れ歯は洗浄できると思われていますが、義歯洗浄剤はあくまで補助であり入れ歯用ブラシでしっかり磨くことは必要です。
また、少しでも義歯洗浄剤が付着したまま使用すると成分によっては炎症を引き起こす原因となってしまう場合もあります。義歯洗浄剤を使ったあとも、必ず流水下でブラシをを使って薬剤や汚れを落とすようにしましょう。
義歯洗浄剤は入れ歯の汚れを浮かすものです。汚れを落とすというより、ブラシでも届かない繊細な部分を洗い、細菌の繁殖を防ぐものと認知しておいたほうが良いでしょう。
- ●どんな時に使えば良い?
- 義歯洗浄剤を必ずしも使わなければいけないというものではありません。日頃のお手入れをしっかりしていれば、入れ歯の臭いや着色が気になったり、汚れがひどい場合に使うだけでも問題はありません。使う場合は、できる限り毎日使うのが理想です。少なくとも週1〜2回は使用すると効果的に使うことができます。
- ●どんなものを使うと良い?
- 義歯洗浄剤にも、成分や形状などで様々な種類があります。市販されているもので多いのが、洗浄剤を水に溶かし発泡させて洗浄するものです。これだと簡単に使えて、さらに近くのドラッグストアなどですぐ購入できるのでおすすめです。
洗浄剤が水に溶けて発生する泡は活性酸素と呼ばれるもので、入れ歯の殺菌と漂白をします。入れ歯の種類によっては、あまり効果が得られなかったり、傷める原因になることもあります。それぞれの入れ歯で効果的な洗浄成分も違いますので、自分の入れ歯に合った義歯洗浄剤や洗浄方法を歯科医師・歯科衛生士に相談すると良いでしょう。