質問への返答2
引き続き 国民健康保険飛騨市民病院 理学療法士 井出浩希先生よりいただいた回答です。
配布した資料に提示したゼリー禁忌の患者さんの理由について説明します。
1.認知症で咀嚼できない、または咀嚼してしまう。
咀嚼できないことにより、丸呑みする可能性があります。
噛まずに大きなゼリーを丸呑みすると窒息する可能性があります。
ゼリーはトロミ水と違い、ノドに落ちていく早さが早いので、嚥下反射のタイミングが遅いと窒息のリスクが高くなります。
また咀嚼した場合には、口腔内の体温により離水し二相性となってしまう、また、まとまりが悪くなるため誤嚥しやすいと考えられます。
2.咽頭期に問題がある。
咽頭期の問題としては、嚥下反射が遅いこと、ノド(喉頭蓋)の変形、残留があります。
・嚥下反射が遅い
ゼリーは口やノドにある時間が長いと離水して水分と固形物に分かれます(二相性)。
トロミのついていない水分やゼリーは口からノドに流れ込む早さが速いので、嚥下反射が遅いと誤嚥しやすいです。
・ノド(喉頭蓋)変形
喉頭蓋がカールしていて、ノドの形状が不利である方もゼリーは喉頭蓋を乗り越えて滑りこんできますので誤嚥しやすいです。
離水した水も気管に流れ込んで活き易いです。
・咽頭残留
残留する部位としては、喉頭蓋谷と梨状窩が多いです。
喉頭蓋谷に残留した場合、ゼリーは体温で溶けて水分となり少しずつ下方に流れ込んできます。
下方には気管があるので、誤嚥のリスクがあります。また梨状窩は気管の隣にあります。
滑りがよいゼリーが気管の隣にあるということは誤嚥の危険性が高いと考えられます。
また、残留する場合の原因として「開く」力が弱い場合があると説明致しました。
食道の入り口が開きにくい場合には、固形物よりも水分やミキサー食のような飲食物の方が通りやすいということも想像して頂けるかと思います。
3.舌が萎縮している
舌が小さくなっていると、ゼリーがノドに滑りこんでくるのを舌でコントロールしにくいです。ゴックンのタイミングが遅れると窒息や誤嚥のリスクが高くなります。
4.体力低下があり、絶対誤嚥させたくない
ゼリーは誤嚥しやすいので、体力が低下していて、わずかな誤嚥でも死に至る可能性がある方には絶対に使いません。
5.呼吸が乱れている、咳が弱い
呼吸が速い場合口で呼吸していることが多いです。空気の移動とともに口の中にあるゼリーも動きやすいことが考えられるため、誤ってノドに流れ込んでしまう可能性があります。梨状窩に残留したときにも呼吸によって梨状窩の深さが変化するので滑って誤嚥する可能性があります。また咳が弱いと窒息しやすくなります。
つづきます
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